三国志のジュンイクは、漢の復興を望んでいたのでしょうか？

三国志のジュンイクは、漢の復興を望んでいたのでしょうか？

ジュンイクは漢の復興を望んでいたのでしょうか？曹操との交わりを考えると、漢はすでにアカンとしていたはず。いつから、漢復興グループになったのでしょう？

1.「後漢書」と2.「三国志」では荀彧の位置づけが異なります



1.荀彧は元々漢の忠臣であり、曹操に漢の復興を期待していた



あくまで結果論ですが、荀彧は漢を守る為に死去します

荀彧の学んだ儒教は漢の正統を守る為の宗教ですから、

その教えに従い、漢の忠臣として、漢に殉じたことになります

「後漢書」の荀彧伝では彼を漢の忠臣として描き、漢臣に入れています

彼の死にしても、「空の器」の話を使い、彼が自殺したと明記しています

しかし、彼が本当に漢の忠臣だったかを疑う声も多数ありました



昔の学者が、曹操と荀彧を泥棒に例えてこんなことを言っています

「一緒に壁を破り、宝箱を開けたのに、中身を取らなければ共犯にはならないのか」

荀彧ほどの人物が曹操のしたい事も解からずに彼を支援していたのか？

気づかぬうちに漢滅亡の方棒を担がされただけの間抜けでは？

荀彧はあくまで曹操勢力の強大化に努めています

その為、曹魏を正統とする「三国志」では、荀彧は魏臣として描かれます



2.荀彧は最初から最後まで忠臣で在り続けたわけではない



荀彧は曹操への献策のとき、曹操を劉邦に置き換えることが多々ありました

その中で荀彧は献帝（劉協）を義帝に置き換えて説明しています

義帝とは、秦に反発した項羽と劉邦が自らの正統化の為に擁立した皇帝です

やがてその存在が不必要になると、項羽によって殺害されます

つまり、「曹操の正統化の為に皇帝を使え」と言っているのです

漢の忠臣がこんな発言をするものか、というのが「三国志」の解釈です

確かに最後は魏の建国を阻み漢に殉じますが、結果論に過ぎないのです

「三国志」では荀彧は「憂死」と述べるのみ止まります

では、漢の為ではないなら荀彧は何のために死んだのかが問題になります



3.荀彧が期待したのは、漢そのもではなく、儒教国家の復興である



最も有力なのは、荀彧と曹操の目指す国家像の食い違いです

荀彧が目指したのは、儒教に基づき運用される国家でした

つまり、漢と同様の「儒教国家」を新たに作ろうとしたのです

漢はもう救いようがないが、儒教国家は復興すべきだ、とうことです

一方の曹操は、弛緩した「儒教国家」の単なる復興ではなく、

儒教に囚われず、君主権力の強化が可能な新たな国家を目指しました



名士を成り立たせているのもは軍事力や経済力ではありません

彼らを支えているものは、儒教に基づく文化的な価値なのです

だからこそ、曹操は儒教に守られた漢を滅ぼすだけではなく、

君主権力の確立、唯才主義による統一、法術主義の実現といった、

理想の国家建国の為に、名士の文化的価値観を粉砕する必要があったのです

荀彧は、名士の存在基盤である儒教を賭けて曹操の行動を妨げました

つまり、初めは漢を新たな国家に造り変える為に曹操に協力するが、

曹操の国家像が儒教中心ではないと知った為に反発した、というところでしょう

荀彧を除く事は、曹操の君主権力強化には致し方の無いことだったのでしょうね



しかし、荀彧を除いても名士の基盤が揺らぐわけではありません

名士を屈服させるには、新たな文化を創り儒教を相対化する必要がありました

そこで曹操は「文学（建安文学）」を推奨し、これを自分の正統化に使うのです

荀彧は殺されたのか、単なる病なのかは不明です

ですが、少なくとも彼は「漢」ではなく「儒教」を守る為に戦ったのは事実です